TSUTAのブログ

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発達障害者やうつ病患者は「できない人」「不幸な人間」でいなければならないのか

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  • 「ちゃんと働くことができているんだから発達障害なわけがない」「遊びに行けるんだからうつ病なんて嘘だろう」

 

発達障害や、その二次障害であるうつ病などの話題を追っているとこのような意見を目にすることがたまにあります。

 

今回の記事では本当に苦しんでいるにもかかわらず、自分の障害や病気について嘘をついている、と言われてしまった人へ向けています。

 

私の場合、発達障害が原因なのか「うっかり」をやらかしてしまうことがあります。

周囲に相談しても「うっかりなんて、そんなの誰にでもあること。障害じゃないでしょ」と言われたこともありました。

(お恥ずかしい話ですが、私の場合の「うっかり」はうっかりランドセルを持たずに登校/うっかり銀行にスマホを放置し2時間気づかない/うっかり食器を燃やして底に穴をあけるといった具合です。誰にでもあること…ではないはず)

 

今回の記事の内容は以下の通りです。

記事の内容

・うまくいっている人に障害や病気について嘘呼ばわりするのは何故か
・障害や病気のことで嘘呼ばわりされてしまったときの対処法

 

 

「目次」クリックで開閉します

 

なぜ「嘘をついている」と思われてしまうのか

 

発達障害うつ病の人に対して、

  • 「うまく行っているのだから障害のはずがない」
    「楽しそうにしている。傷ついたというのは嘘なんだろう」

という言葉を投げかける人がいます。

 

なぜこのように思われてしまうのか。その原因は

ことだと思います。

 

発達障害うつ病=うまくいかない人」という色眼鏡

 

恐らく、発達障害者やうつ病の人に対して「うまくやれているのだから大したことない」「障害や病気は嘘ではないか」という言葉を投げかける人は一種の色眼鏡で発達障害者やうつ病の人のことを見ているのではないかと思います。

 

  • 発達障害者は仕事ができない人間のはずだ
    うつ病の人間が笑っていられるはずがない

というようにその人の中で「~のはずだ」「~のはずがない」という固定されたイメージ、いわゆる価値基準があり、その基準からずれている人を見ると「嘘をついている」と思ってしまうのではないでしょうか。

 

発達障害うつ病は嘘ではないか?と言われてしまったら

 

本当に深刻に悩んで、なんとか無理して頑張っているのに障害や病気を嘘呼ばわりされてしまったら、きっと心に大きく傷を受けてしまうことでしょう。

ここで気をつけてほしいのが、

  • ・無理に相手の考えを変えようとしない

ということです

 

無理に相手の考えを変えようとしない

 

本当に悩んでいるのに障害やうつ病のことを嘘だと思われてしまうと、訂正したくなったり反論したくなったりするかと思います。

 

しかし、普段から親しくしていて、こちらの言い分もちゃんと聞いて理解してくれる人でない限り無理に相手の考えを変えようとしないほうが無難です。

 

発達障害や病気のことで嘘呼ばわりされて心がかき乱されてしまうかもしれませんが、反論せず、「この人はこう考えるんだな」と一度受け入れてみてください。

うまくいっている発達障害者やうつ病の人を見て嘘をついている、という思考をしてしまう事情があるんだろうなと考えるのです。

 

考え方や価値観はこれまで育ってきた環境などが強く影響してきます。もしかすると、他人の障害や病気のことを「嘘をついている」「本当は傷ついていない」と決めつけなければ自分が辛くなってしまう何らかの事情があるのかもしれません。

発達障害うつ病について嘘をついていると言われてしまった場合はこのように相手の考え方、価値観をひとまず受け止めてください。


賛同も否定も必要ありません。ただ受け止めるだけです。

 

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受け止めるだけなんてそんなの泣き寝入りみたいで嫌だ

と思うかもしれません。

 

しかし、だからといって「障害やうつ病を嘘呼ばわりするなんて間違っている!」と強く言ってしまえば余計に反感を買ってしまいます。

そもそも、相手の意識を無理に変えようとするのは不可能です。

価値観や考え方は人それぞれです。たとえ自分にとって悪だと思うような意見でも真っ向から否定してしまえば相手の考えを自分の理想どおりにコントロールするようなことと同じです。

悔しく思ったからと言って無理に相手の考えを変えようとしたり強く否定すれば、次第に周りから人が去ってしまいます。

 

反論すると事態は悪化する

反論して相手を言い負かすことができれば、スッキリするはず、と思うかもしれませんが、一時的ではないでしょうか。

 

言い負かされた相手は反発心を募らせ、今度はもっとひどい言葉を使って攻撃してくるかもしれません。話がこじれて争いに発展する可能性もあります。

 

一度言い負かしたと思った相手でも「このまま黙っているなんて腹の虫がおさまらない!」と再び攻撃してくる場合もあります。
一度言い負かされた屈辱から次は負けるまいと、より言動がエスカレートしていくかもしれません。

そうなってしまうと、悪口や陰口の応酬となり、余計にストレスが重なっていくことになります。

 

相手の間違いを指摘したところで発達障害うつ病が治るわけではなく、むしろ更に悪化する要因になってしまう可能性があるのです。

 

  • ・他人の考え方や価値観を無理に変えることはできない
    ・反論しても問題は解決しない

といった点から、「発達障害うつ病なんて嘘だろう」と言われても、言い返したりしないほうが得策です。

 

他人の「こうあるべき」に合わせるとつらい

 

反論しないほうがいいのと同じく、相手の意見に合わせすぎるのも問題です。

無理して相手の意見に合わせてしまうと自分を偽ることになって辛くなる一方だからです。

 

発達障害の場合

  • 誰かに「◯◯ができているから発達障害のはずがない」と言われた

    「◯◯ができている自分は発達障害であることを表に出さないほうがいいのかも」と考える

    障害を隠して無理をする。次第に◯◯以外の分野で発達障害特有のミスをしてしまうようになる

…というようなケースがあります。

 

発達障害者の得意/不得意には強弱や個人差があります。

ある分野では問題なくても、別の分野では発達障害ゆえの重大な失敗をしてしまうこと、身に覚えはないでしょうか?

 

例えば、アスペルガーの特性として「対人関係が苦手」「こだわりが強い」といった特性がありますが、人によってはこだわりはそこまで強くなく、問題ないという人であっても対人関係は全くうまくいかないという場合もあります。

 

また、同じ障害特性でも人によって深刻さに差がありますよね。

例えば、ADHDの特性として「不注意」がありますが、仕事で軽いミスをする程度の人もいれば、料理中火を使っている最中であることをすっかり忘れてぼや騒ぎになる等重大なミスをしてしまう人もいるというわけです。

 

自身の経験から実感しているかと思いますが、このように発達障害には得意分野、苦手分野に強弱や個人差があり、「これができないから発達障害」「これだけ失敗しているから発達障害」など簡単には決めることができません。

一部の分野でうまくできていても他の分野では障害の影響でまともに行動できない、ということをこれまで何度か実感してきた経験があるのではないでしょうか。

 

にもかかわらず、「うまくいっているから発達障害者じゃない」という言葉に従って、自分の障害を隠してしまえば、できないことさえも無理してできるように振る舞わなければいけなくなります。

 

相手の言葉に従って、発達障害であることを隠した場合、以下のことが予想されます。

  • 障害を隠していれば、「できないわけがない」と思われ、本当は障害のためにできないことなのに「やる気がないんだろう」「集中すればできるはず」「本気出して」と言われる

    そして努力すれば、工夫すればできるはずと相当無理して自分を追い込む

できないことでも我慢して無理を続けた結果、限界がきて「何のために生きているのかわからなくなった」と燃え尽きてしまうこともあるそうです。

「うまくいっているんだから発達障害なはずがない」という言葉に従って「発達障害者ではない」かのように振る舞ってしまうと自分に無理を強制してしまう上に燃え尽きてしまうという末路になってしまうのです。

 

うつ病の場合

  • 誰かに「笑顔の人間がうつ病のはずがない」と言われた

    うつ病で笑顔になっちゃいけないんだ…」と考える

    本当は楽しくしたいのに相手の反応を気にして、感情を抑え込む

…というケースが考えられます。

 

ですが、うつ病だからといって365日24時間常に気が滅入っているわけではありませんよね。

布団から出る気力も出てこない、一歩も動けない日もあれば、たまたま調子が良く、出かけることができる日もあります。

 

出かけることができた、遊びに行っている状態がずっと続いているようであれば「うつ病から抜け出せた」と言ってもよいでしょうが、実際にはその日だけ調子がよかった、なんてこともあるのではないでしょうか。そして次の日にはまた元のように悩みモードや無気力モードに戻ってしまうんですよね。

 

このようにうつ病でも良い時と悪い時があります。

しかし、そのたまたま回復している時の姿を見て「うつ病だと偽ってサボっている、怠けている」と思われてしまうこともあるようです。

 

このような意見に合わせて、調子が良い時でさえも明るく振る舞ったりせず、「楽しい」という感情を表に出さないほうがいいのでしょうか?けしてそんなことはないはずです。

 

「楽しそうにしている人間がうつ病のはずがない」という言葉に合わせて暗い表情になっていれば、心の中まで同じように暗くなり、うつ状態がひどくなってしまいます。

 

以上、「うまくいっている人間が発達障害者やうつ病なわけがない」という主張に合わせてしまうと自分が辛くなってしまうことをお伝えしました。

 

まとめ

 

もしも「うまくいっているのだから発達障害者ではない/うつ病ではない。嘘をつくな」と言われてしまった場合の対処について述べてきました。以下、内容をまとめます。

 

【なぜうまくいっている人に対して障害や病気を嘘呼ばわりするのか?】

  • 相手の中に発達障害うつ病に関して「こうあるべき」「~のはずだ」という固定された価値基準があるから

 

自分の発達障害うつ病に関して嘘呼ばわりされたときの対処法

  • 相手の主張をひとまず受け止める。

    無理に反論したり、意見を変えようとしない。
    相手の発言に合わせるのも✕。

 

嘘をついて発達障害者やうつ病を装う人も世の中にいる、と聞いたことがありますが、実際に発達障害うつ病を名乗る人は本当に何か深刻な悩みがあって困っている人がほとんどだと思います。

実際に診断した医者でもない人に「うまくいっているんだから発達障害者ではない/うつ病ではない」と言われたら辛くなってしまいますよね。

そこで、その辛い気持ちを引きずってしまうとせっかくの貴重な時間を無駄に使うことになります。

 

今回の記事が、障害や病気を嘘だと言われて傷ついた人の助けになれば幸いです。

 

 

この記事は以下の情報を参考にして執筆しました。
『マジメすぎて苦しい人たち』
『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』
『人生はブレていい』